7日。
朝からミルドレッドはご機嫌です。
彼氏のドラケンに、大事な人だとはっきりと言ってもらえたのが、嬉しくてたまらないのです。
(えへへ……)
怖いほど幸せって、こういうことを言うのかしら?
顔がにやけて止まりません。
恋愛って不思議。
嬉しくなったり悲しくなったり、また幸せになったり……
これから先もまた不安になったりすることがあるかもしれないけど、一つずつ乗り越えていければいいなあと思うミルドレッドです。
ドラケンと仲直りもしたし、また以前のように顔を合わせることが出来るのが嬉しくて上機嫌で家を出ると、ちょうど前に、ミルドレッドたち家族と同居している伯母のミュリエルがいるのが見えました。
「ミュリエルお姉ちゃん、何やってるの?」
ミルドレッドが同じようにどこかに出かけようとしているミュリエルに機嫌よく声をかけると、伯母さんはポッと頬を染めて、
「ドラケンをデートに誘いに行くのよ」
!!??
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん、それあたしの彼氏よ!!」
「だから何なのよッ」
と、意にも介さず、ちょうど家の区画から通りへ出てきたドラケンにダーッと駆け寄るミュリエル伯母さん。
イ、イヤーーやめて!!
ミュリエルお姉ちゃんは「ラムサラ好き」だし断られると思うけど、でもあたしの彼氏に手は出さないで~!
ミルドレッドは慌てて追いかけます。
「ドラケン! 明日遊びに行きましょ!」
「え?」
ミュリエルに声をかけられたものの、ドラケンはもちろん断ってくれて(笑)、その後ミルドレッドを見つけて「おはよう」の挨拶をしてくれました。
ミュリエルはと言うと、しばらく無言で突っ立っていた後、ダッシュでどこかへ行ってしまいました……。
「今の、ミルドレッドのお姉さんだよね? ちょっとびっくりしたな……」
「お、お姉ちゃんじゃなくって伯母さんよー!」
お、お姉ちゃんも誰かデートに誘いたくなるときがあるのね……。っていうか、ドラケンみたいな男の人がタイプなの!?
「ラムサラ好き」のミュリエル伯母さんがデートのお誘いをする場面に初めて出くわし、その相手が自分の彼氏だったことに、ミルドレッドもびっくりです。
その後ミルドレッドもバハに仕事に行き、夜に帰宅すると、ユーカちゃん
が家までやってきていました。
もしかしてお目当ては弟の
キリアン?
しかし、当のキリアン含め家に誰もいなくて、ユーカちゃんの用事のある相手は誰だったのか、わからずじまいです。
8日。
朝、通りに出ると、同じく家を出てきたドラケンがミルドレッドに声をかけてきました。
「おはよう、ミルドレッド。何やってるの?」
「おはようドラケン。そうね、何しようかな」
恋人の隣に行きながら、そう答えて彼を見上げるミルドレッド。
今までと違って、そういった何気ない会話が心地よく感じられて、自然に笑顔が出てきます。すると彼も、答えるようにミルドレッドに笑顔を向けてきました。
あたし、ドラケンのこんな顔が見たかったの。
急に胸がいっぱいになってきて、そんな思いが浮かんだミルドレッド。そんなミルドレッドを見つめたまま、ドラケンが、こう言ってきました。
「ミルドレッドのそういう笑顔が見たかったんだ」
ああ、おんなじです。
こんなに簡単だったのに、どうして出来なかったんだろう。
「一緒に仕事行こうか?」
「うん」
素直に頷きながら、ミルドレッドがもうちょっと彼とくっつきたいと我知らず手を伸ばしかけたら、彼もまるでその手を受け取るように握ってくてました。
そのまま手をつないで歩き始めた二人。特に口にのぼらせる話題はないけれど、付き合い始めても互いの距離感がつかめず、手探りで相手に近づこうとしてはうまくいかずにぎくしゃくしていた時と違って、今は、隣にいるだけで、自然な雰囲気になっていることに、お互いに気づいているはずです。