608年後半(1)   

18日朝。
ミルドレッドが、アトリお父さんの試合を見に行こうと通りを歩いていると、声をかけられました。








b0057741_1911521.gif「おはよ、お姉ちゃん」
 
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弟のキリアンです。

b0057741_2062380.gif「おはようキリアン」
キリアンは積極性があるせいか、よくミルドレッドに声をかけてきてくれます。でも、この日は久しぶり。

b0057741_1911521.gif「あのさ……」
b0057741_2062380.gif「どうしたのよ?」
b0057741_1911521.gif「……いや、えっと、最近どう?」
b0057741_2062380.gif「えっ? 新婚生活が楽しくって!」
ミルドレッドが思わず幸せいっぱいの顔で答えると、

b0057741_1911521.gif「そっか……うん、そうだよね。もーわかりきってたのに聞くんじゃなかったよ!」
キリアンもちょっと笑って、ミルドレッドの背中をバシバシ叩くとそのまま行ってしまいました。

どうしたのかしら? 他に言いたいことがあったみたいに感じたけど……。

弟の様子が少しおかしかったわけは、後で判明します。




20日。

b0057741_13374255.gifミルドレッドの両親の友人である、ボーダンおじさんの奥さんの、

b0057741_14235523.gifタリデアさんが危篤になったとの知らせが来ました。

タリデアさんは今年25歳になったばかり。ボーダンおじさんとは結婚するのが遅かったので、子供二人はまだ学生です。

b0057741_9511313.gif(一人目のオロロちゃんが来年成人)


そしてこの日はエナコンの日でもあります。
ミルドレッドは新妻になったので、毎年出ていたエナコンももう関係ないのですが、ミスプルトの部には、

b0057741_13445659.gifドラケンのお母さんである、未亡人ルレジーナさんが1位で出場。(そしてミスプルトに)
ミスタープルトの部は…
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b0057741_208126.gif1位のサフィール君(全能)が余裕で遅刻して来てた上に、優勝していました(笑


21日。
今日はタリデアさんの葬儀です。
そして朝、もう一つ、その通知の後にミルドレッドが知ったのは……ミルドレッドの母、レイチェルの危篤を告げる知らせでした。

b0057741_2062380.gif(えっ……)
そんな……あたし、この間お母さんに祝ってもらって結婚したばかりなのに!

ミルドレッドがリム区北邸に駆けつけると、レイチェルお母さんはお見舞い客に見守られながら、ベッドに伏せていました。
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未婚で家に居るキリアンのほか、結婚で家を出て行った姉エリン、兄ベイセル、レイチェルお母さんの兄ウォルター伯父さんもお見舞いに訪れています。
そして、ミルドレッドに気づいたキリアンが、ためらいがちに声をかけてきました。

b0057741_1911521.gif「お母さんさ、最近すぐ疲れるみたいだったから……もしかしたらと思ってたんだけどさ……」

もしかして、この間キリアンが声をかけてきたのは、それを言いたかったの?
あたしは新婚で幸せな気分でいたから、聞いてあげられなかった。

b0057741_1911521.gif「それはお姉ちゃんのせいじゃないよ」
b0057741_2062380.gif「うん……」
幸せな気分に水をさすのを躊躇したキリアンの気持ちもわかります。でも突然のことに、ミルドレッドは気持ちの整理が付きません。

午後は、ウォルター伯父さんb0057741_1230289.gifと、アトリお父さんの試合。
お母さん……お父さんの試合には欠かさず応援に来てたのに。
お父さんは、レイチェルお母さんの容態のせいで気が気でないのか、ウォルター伯父さんに負けてしまっていました。

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そしてこの日の夜はイム杯ナイター。
ちょうど、レイチェルお母さんが出場する予定の試合でした。しかし、危篤のレイチェルは闘技場に来られず、不戦敗となりました。

その夜、ミルドレッドは、母を看取るために実家に戻りました。

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夜明けまでは、まだ母と話せます。
ミルドレッドは、ベッドのそばで母に語りかけていました。

b0057741_2062380.gif「お母さん、あたしね、結婚する前も、結婚して家を出て行く時もお母さんがあたしを気にかけて話をしてくれて、嬉しかったの。もらった月の花束、まだ綺麗に咲いてるのよ……」

ミルドレッドは成人してからは自分のことでいっぱいで、母ときちんと話をしたことは数える程しかありません。でも、何度かお母さんの方から大事な話をしてくれたことは覚えています。
とりとめなく話をする間も、お母さんはずっと震えたまま。夜明けと共に、母の命も尽きるでしょう。
でもそれまではお母さんと話をしていたい。傍に付いていたい。


やがて夜も明けたのか、一つの知らせが国に響き渡りました。


「リム区北のレイチェル・コヤマが死亡しました」



それを聞いて、思わず顔を上げて叫んだミルドレッド。

b0057741_2062380.gif「……まだ死んでないわよ!!」
クラリッサおばあちゃんの時もそうだった。ミルドレッドは、子供のとき、同居していた祖母の臨終にも立ち会ったことがあります。その時も、まだかろうじて会話が出来るのに、おばあちゃんはもう死んだという知らせが、国中に響き渡ったのです。

あの時はまだ子供で意味がわからなかった。でも今は意味がわかります。
どうしてそんなことが言えるの?
だってまだ、ベッドで震えて、こちらから声をかけたら、答えてくれるのに。心配をかけてごめんねって。
ごめんねって……。


やがて神官と巫女さんたちがどこからともなくやって来て、お母さんの枕元に立ちました。

b0057741_2062380.gif「まだ喋れるの。死んだって言わないで!」

家族が驚いている中、巫女さんたちに食って掛かりそうな勢いのミルドレッドのそばにアトリお父さんが来て、

b0057741_14242029.gif「ミルドレッド。お母さんを静かに見送ってあげなさい」

優しくそう言ってきます。
ミルドレッドだって本当はわかっています。もう少ししたら、レイチェルお母さんは本当にいなくなるのだということを。何故ならそれも、祖母の時に見たからです。
そして、ずっと自分が母と話をしていたけれど、きっと一番長い間連れ添ったお父さんが、最後はお母さんと静かに話をしたいということも。
ミルドレッドはうなだれて、顔を拭って気づきました。今、自分はすごく怒っているのだと思っていたけれど、泣いていたことに。

b0057741_2062380.gif「……お父さん、あたし……ごめんなさい……」
b0057741_14242029.gif「謝らなくても大丈夫だよ」
b0057741_2062380.gif「……お父さんが最後に声をかけてあげて」
b0057741_14242029.gif「うん」
お父さんが、お母さんの頬を撫でながら静かにお別れの言葉を伝えます。


b0057741_14242029.gif「レイチェルさん、寂しいけど、先に逝ってしまうんだね……強くて優しくて前向きで、頑張り屋なレイチェルさんが、ぼくは大好きだったよ。今までも、これからも」
b0057741_2084239.gif「あら……そんなに褒めてくれると照れるわよ……ありがとうねアトリ……」
苦しそうだった母は、ふっと笑って父にそう答えると、本当の永遠の眠りに就いたのでした。




22日。
レイチェルの葬儀です。
葬儀には、ボーダン君も来てくれていました。


b0057741_2084239.gifレイチェル・コヤマ 24歳 夫:アトリ★21歳
コークA2位 ショルグ長5回 リム1位 19026 ウルグ長3回 143/139/181
65勝40敗23KO 9連勝 コーク杯2回 シニア杯1回 DD杯1回 剣豪 ミスプルト


アトリ君と4歳差の夫婦だったので、双子を作ると、アトリ君も一緒に寿命が延びて、結局夫婦の寿命が釣り合わないのでは? とレイチェルはウミカイの卵を食べるようにしていたのですが(レイチェル日記にも卵を食べてる場面がちょこちょこ出てくる)、思ったよりも早くワクトの元へ召されてしまいました。恐らく本来の寿命は20歳くらいと思われます……。
タリデア(ポーラちゃんの娘)とは同級生でした。

レイチェルはその父親に似て、元「ろくでなし」の、積極性・勤勉性・優しさが全部マイナス方向に吹っ切れたPCだったので、性格改善に恐ろしく苦労した思い出があります……。が、「みんなのアイドル」になったおかげで、NPC化したら、よく働くし、試合でも強いし、夫の試合を全部見に行く優しい妻でした。夜も、その積極性のおかげで訓練に行ってしまうかと思いきや、家の中でよく料理をしてくれていて、レイチェルの母クラリッサを彷彿とさせるいいお母さんでした。レイチェル、お疲れ様……!


そして、ボーダン君とアトリ君は、プレイヤーも驚いたことに、ほぼ同時に妻を亡くして、頭に黒渦をつけたやもめになってしまいました。



葬儀後の神殿で、ミルドレッドはボーダンおじさんとアトリお父さんが肩を並べながら話をしているのを見かけました。

b0057741_13374255.gif「まさかタリデアとレイチェルさんが続けて亡くなっちゃうとはな……お前のことだから、置いていかないでって泣いてるかと思ったけど」
b0057741_14242029.gif「ぼくももういい大人だからそんなことないよ。ちゃんとお別れをしたよ」
b0057741_13374255.gif「そっかー。じゃあうちで飲もーぜ…」(肩ぽんぽん)
b0057741_14242029.gif「うん。……ボーダン君」
b0057741_13374255.gif「え?」
b0057741_14242029.gif「ぼ、ぼくより先に死んだらだめだからね」
b0057741_13374255.gif「ええっ? そんなのわかんねーし!」
b0057741_14242029.gif「そもそもボーダン君は、お子さんたちが成人するまで生きなきゃダメだよ」
b0057741_13374255.gif「あっそーか。じゃあ、しばらくお前も死ねないってことだなー……」
b0057741_14242029.gif「そうなるのかな……」
ボーダンおじさんの言葉に、アトリお父さんが苦笑いをしています。


良かった、お父さんにはいいお友達がいるものね。


ミルドレッドは安心してその場を離れました。
レイチェルお母さんには自分の孫を見せてあげられなかったけど、お母さんはきっとまた、必要な時は遠くから見ていてくれるでしょう。

多分お母さんは、残された側ががずっと泣いて悲しんでいるよりも、前を向いて歩いて行く方が好きだった人のはずだから、あたしも泣くのは朝のあの時だけってことにするわ。


神殿前から通りへ出ようとすると、夫が迎えに来ていました。

b0057741_18254468.gif「……泣いてるかと思ったけど」
b0057741_2062380.gif「もう朝たくさん泣いたのよ」
思ったほど憔悴していないミルドレッドに、ドラケンも意外だった様子。でもミルドレッドの眼はまだ赤いけれど、その返事から、いつまでも母の死を引きずって嘆いていても駄目なのだという意思は読み取れたようです。

そうしてミルドレッドたちは、今日もまた、いつものように仕事をするために歩き出したのでした。





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by blue-ground | 2014-12-15 00:00 | プレイ日記目次(11代ー)

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