549年前半(2):
2005年 09月 01日
それはまさに彼女が今言った理由からなのでしょう。
ハーミアちゃんの告白はもちろん、アルバートからすると断るしかありません。
でも、その言葉が簡単には出てきません。
何故なら、自分がエレノールに告白した時とまったく同じである彼女の告白のセリフが持つ意味が、アルバートには痛いほどわかるからです。
好きなのに、子供と言うだけで好きな相手は自分のことが眼中にない。大人になったら、好きな相手にはもう別の人がいてやっぱり眼中にない。
アルバートも、まったく同じ思いを年上のエレノール相手に味わったことがあるのです。
今まで、自分が特に何ということもなく話していたことや接していた態度が、彼女をどれほど傷つけていたかわかるあまり、うかつに口が開けないのです。
しかし、アルバートは彼女の告白に応じることはできません。
どう答えればいいのだろう。もう結婚しているから? 君をそういうふうに見たことがないから?
それとも、君の気持ちは痛いほどわかるよと言えばいい?
何を言っても、彼女にこたえられないことには違いありません。
「……ごめん」
アルバートはそれだけ言うのがやっとでした。
「……私こそごめんなさい……お子さんももう2人も産まれてるし、やっとお祝いできる決心が出来たのに、こ、こんなこと言っちゃって……」
ハーミアちゃんはアルバートの言葉を耳にすると、視線を一度落としてから顔をあげ、笑いながらそう言いましたが、最後は涙声になっていました。
「本当にごめん……」
その時、赤ん坊のビアンカが突然泣き出しました。慌てて娘の傍に行くアルバート。ハーミアちゃんは娘をあやすアルバートを見ながら、
「もうちょっと時間がかかると思うけど……もっと普通に話が出来るような日が来たら、またお邪魔させてください」
と最後に言い残して帰っていきました。
アルバートは、もしタダヒコさんが亡くなってなかったら、自分も今の彼女と同じ立場だったかもしれないと複雑な面持ちでハーミアちゃんの後姿を見送りました。
その夜はミダ杯の1回戦。
アルバートの初の武術大会の試合の日でした。
昼間の出来事でちょっと動揺しつつも、アルバート、ぎりぎりのポイントで何とか1回戦突破しました。
その夜遅くの自宅。
「……俺は運が良かったのかな」
「え? 今夜の1回戦の勝利のこと?」
椅子に座っていたアルバートの呟きを耳にして、娘二人を寝かしつけながら訊ねるエレノール。アルバートは笑って首を横に振りながら、
「エレノール、愛してるよ」
「な、何?? 急に」
「言いたくなったんだ」
エレノールに愛しているといえる自分がどんなに恵まれている立場なのか、今更ながら痛感したアルバートでした。
#本当にハーミアちゃんこんな感じで何度かPC宅に来ましたヨ……。
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by blue-ground | 2005-09-01 14:50 | 6代目アルバート