593年中盤:
2007年 10月 30日
この日は前日危篤になっていたコークショルグ長のコナンさんの葬儀でした。
レイチェルの一家は、結婚して家を出て行った一番上の姉のアリエル以外、両親も子供も全員コーク所属なので、皆で葬儀に参列です。
レイチェルが朝家を出てワクト神殿に向かっていると、先に葬儀へ向かった
パパが歩いているのが見えました。
それを見た瞬間、どきりとしたレイチェル。
……いつもだったら走ってるパパが歩いてるなんて……
夕べのジマ杯の決勝で疲労がたまりやすく見えたパパが、レイチェルは心配です。
疲労ゲージが黄色になって少し疲れた様子のパパは、広場で水を飲んで一息ついた後、神殿へと入っていきました。
その後をついて同じく神殿に入ったレイチェル。
葬儀が始まるのを待っていたら、
ジェラルドおじさん(8代目PCの弟。レイチェルにとってはおじいさんの弟)が、
何と彼女を連れて神殿に婚約にきました。
おじさんは20歳ほど(!)年が離れてる
グンジィさんと、とうとう結婚を決めた様子。
ジェラルドは初婚です。
まさか婚約するなんて思っていなかったプレイヤーは、デート進行度をまったくチェックしていなかったので、驚きです…
12日。
この日レイチェルが通りを歩いていると、
ボーダン君が女の子と連れ立ってデートをしているのを目撃しました。
今年成人したばかりのレイチェルの子分(?)ボーダン君は、「超ワイルド」で積極性がかなり高いため、さっそく恋人を作った様子。
(ちょ、ボーダン早くない……!?)
しかも相手は、
レイチェルの同級生のタリデア(ポーラちゃんの娘)。
ボーダンってば年上が好きだったの?
去年まで学生で子供だと思っていたボーダン君が、さっさと恋人(しかも年上)を作ってデートしてるなんて、レイチェルは何だか不思議な感じです。
16日。
今日はイム争奪戦のトーナメント発表の日です。
出場メンバーはクラリッサママ や ヌーノ叔父さん 、ジェラルドおじさん。パパはいつものごとく仕事ポイントが足りなかったようで、メンバーに選抜されませんでした。
夜、家に帰ったあと、ママに話しかけたレイチェル。
「イム争奪戦、パパは残念だけど、ママ頑張ってよ!」
「そう……そうね……」
ママは力なく笑ってそう答えただけでした。ママは何も言いませんが、ジマ杯の決勝の日以来、目に見えて元気がないのにレイチェルも気づいています。
この夜、ママは珍しく失敗した料理を2つも作っていました。
そして翌17日。
この朝とうとう、恐れていたことがおきました。
パパが、危篤になってしまったのです。
レイチェルが寝室へ向かうと、ベッドで震えているパパと、その傍に真っ白な顔をして立っているママの姿が見えました。
今まで前兆があったとは言え、この目に入った光景が意味するところが、レイチェルにはすぐには信じられません。
だって、パパにはママがあんなに花色ゆで卵を食べさせていたのに……!
花色ゆで卵には、寿命を延ばす効果があります。
レイチェルは、パパと10歳年が離れたママが、出来るだけ長く夫婦一緒に暮らしたいと、毎年花色ゆで卵をたくさん作ってパパに食べさせていたのを、小さい頃から見てきて知っていました。そして、何故、食べさせていたのがウミカイの卵ではなく、花色ゆで卵だったのかの理由も。
ウミカイの卵は30歳までしか寿命を延ばせませんが、ラフィアの花と一緒にゆでた卵は、30歳を過ぎても寿命を延ばせます。
ママは30歳を過ぎても、パパにずっと元気でいて欲しかったのです。
でも……ママの願いもむなしく、先日31歳の誕生日を迎えたばかりのパパは、今朝、危篤の床についてしまったのでした。
パパの危篤の知らせを聞いて、家には次々に見舞い客が朝から訪れました。パパはガアチウルグ長なので、ウルグ員も大勢訪問に来ます。見舞い客の中には、ヌーノ叔父さんもいました。
ようやく夜になって、訪問者も減り、家族だけでパパの傍にいることが出来るようになりました。姉や兄が順番に、パパにゆっくりと最後のお別れを告げて行きます。
レイチェルは自分の番が来る前にはパパに色々なことを話したかったのに、いざ順番が来ると何を話せばいいのかわからなくなってしまい、結局言えたのはこれだけでした。
「パパ、具合はどう……?」
「心配かけてすまんな……」
パパは苦しい息の下で笑っていますが、あんなに強かったパパは、もう起き上がる力もなくベッドで震えているだけ。明日の朝には、パパはワクトの元へ召されてしまうでしょう。誰も、この運命から逃れられないのです。
そうして、最後にママの番になりました。
ママはきっとレイチェルよりも、子供たちの誰よりも、パパにたくさん言いたいことがあるに違いありません。
ところが、ママがパパを長い間じっと見つめて、ようやくかけた言葉は、こうだったのです。
「マ……マリリンさんにようやく会えますね……」
……?
マリリンさんって誰だろう……?
ママの言っている女性が誰なのかわからなくて、子供たちはみんな顔を見合わせています。
でも、レイチェルには一つだけ思い当たることがありました。
もしかしてその人が、昔パパが言ってた、パパが前に結婚したけれど亡くした女性なの?
「きっとマリリンさんはノズルさんを待ってたでしょうに……ずっとずっと、私があなたを引き止めていて……ご……ごめんなさいって、彼女に伝えてくださいね……」
そうパパに囁き、謝っているママ。ママはもしかして、パパを延命しながら、パパの前の奥さんにずっと申し訳なく思っていたのかもしれません。
しかし、苦しげな息の下でママをじっと見上げていたパパは、ママの腕を掴むと、弱々しく微笑んでこう言ったのでした。
「お前も、待ってるよ」
と。
それを聞いた途端、ママが泣き出してしまいました。きっと、ママが一番欲しかった言葉を、パパが言ってくれたのでしょう。そしてパパの言葉に後押しされて、ママは、パパに本当に伝えたかった自分のお別れの言葉を、もう一度伝えたのでした。
「わ、私が傍に行けるのはいつかわからないけど、でもきっとまた、あなたの後を追いかけて傍に行きますから……」
「うん……」
「あなたがいやだと言っても、昔のようにどこまでもついていきますから……!」
パパは目でうなずいています。
そしてとうとう夜が明け、巫女さんと神官が家にやってきて、パパのベッドの傍に立ちました。
ママがパパの両手を握って、パパを見つめて、最後の言葉を、今度は泣きすぎて目を真っ赤にしながらも笑顔でささやきます。
「またいつか、私があなたの傍に行けたら、一緒に手をつないで歩きましょうね……」
パパはママを見つめ返してうなずくと、そのままゆっくりと目を閉じ、そして、二度と再び目を開けることはなかったのでした。
イラスト:えりむうとんさん(SHINING MAQUINA889)
※同じものが頂き物カテゴリの中にもあります
18日。
パパの葬儀です。
しかしガアチウルグ長だったパパが亡くなったことで、ウルグ長の交代が起き、葬儀の朝だと言うのにレイチェルたち家族は先に引越を余儀なくされました。
ウルグ長邸から港区へ引越です。
ママは「不幸のどん底」のまま、荷物をまとめて新しい家に向かい、そして今度は喪主として葬儀に出るために、重い足取りで神殿へ向かったのでした。
ノズル・コヤマ 享年31歳。
ショルグ長9回、ガアチ5位(5680ポイント)、ウルグ長1回、137/133/136
98勝36敗25KO12連勝、コーク杯3回、ジマ杯1回、ミダ杯3回、シニア杯1回優勝、称号「剣豪」「大魔導」「輝ける王者」
とても大好きな旦那様でした。
前PCクラリッサの時に、長生きして欲しくて花色ゆで卵で7年ほど彼の寿命を延ばしたのですが、悲しいかな、元の寿命があまり長いほうではなかったようです……ああ……(恐らく24歳前後)
元「ろくでなし」で、最後まですごく冷たかったのですが、そのせいで時折見せてくれる優しさが普通の何倍も嬉しく感じられ(まさに「ろくでなし」な男に惚れている状態…)、武術大会も、最初弱かったのが、25歳ピークと言うのもあり、段々強くなっていくさまが本当にリアルでした。前々PCヴィクトールと創作の中で友人設定にしていましたが、本当にヴィクトールを友人欄の上位にずっと入れていて、だからクラリッサのデートのお誘いをOKしてくれないのかなーと思ったり、ヴィクトールが亡くなった日、葬儀後の午後に神殿に一人でお祈りに行ってくれたり(感激しました)など、NPCなのに感情があるような行動をしていたのが印象深かったです。
ノズル君の顔グラはそれまで特になんとも思っていなかったのですが、彼と結婚したことで、プルトの男性の顔の中で一番好きな顔(結婚したくなる顔)になりました。
最期に、大好きなお酒を持って危篤の床についていたのがとても彼らしかったです。
たくさんの思い出をありがとう、そして、さようなら……!
そして、20歳で夫を亡くしてしまった前PCクラリッサ。
運命とは残酷なもので、クラリッサの寿命はかなり長く、彼女はこの後とても長い間、先に逝ってしまった夫を一人思って暮らすことになります。
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by blue-ground | 2007-10-30 00:00 | 10代目レイチェル